エクセルやスプレッドシートを用いて予実管理を行っている企業は少なくありません。ここでは、エクセルで予実管理をするメリット・デメリット、有効な予実管理方法をご紹介します。
エクセルは表計算ソフトであり、予実管理を行うために設計されたソフトウェアではありません。しかしながら、自由度が高く、非常に便利なことから、多くの企業で予実管理業務に利用されています。
エクセルで予実管理を行うメリットは、以下の通りです。
1ユーザーにつき年間5,000円〜20,000円程度(※)と、一般的なITツールと比較しても安価です。また、パソコンの機種によっては、あらかじめエクセルがインストールされており、無料で利用できることもあります。
※2021年3月時点で当編集部が「予実管理システム」と検索し、上位表示される30社の各公式HPの料金を調査し、独自に算出したものです。最新の料金は各公式HPをご確認ください。
ビジネスの現場では、見積書や稟議書、議事録の作成など、予実管理以外にもさまざまな用途で利用されており、使い慣れている人が多いソフトです。
エクセルで予実管理を行う場合、自社の予算状況や運営体制に適したフォーマットを一から作成できます。
関数やマクロの知識がある人なら、汎用性が高くカスタマイズしやすいでしょう。
予実管理業務には多くの人が携わるため、誰でも操作できるエクセルを利用すると、作業プロセスを円滑に進められるメリットがあります。
一方で、エクセルを使った予実管理には、以下のようなデメリットもあります。
企業の規模が大きくなると、予実管理は複雑化します。それに見合った管理シートの作成にはそれなりの知識や経験、時間が必要です。例えば、組織改編に伴う部門変更が発生した際、全てのファイルを修正しなければならず時間がかかることもあります。運営負荷が高くなりがちです。
各部署から収集した予算ファイルを集計しなくてはならず、手間や時間がかかるだけでなく、転記ミスや集計ミスが起きることも少なくありません。また、複雑な設定の場合、作成した本人でないとメンテナンスができないこともあります。
予算管理担当者が各部署に予算ファイルを配布し、提出された予算ファイルを集計するまで、多くの時間がかかります。
部署ごとに予算ファイルのフォーマットが違ったり、提出するタイミングが異なったりすれば、さらに手間がかかりかねません。リアルタイムな経営判断を求めるのには不向きです。
エクセルはあくまで表計算ソフトであるため、予実管理に柔軟に対応できないというデメリットがあります。
Googleが提供する表計算ツール「スプレッドシート」。エクセルとほぼ同じ機能を備えているうえ、Web上のアプリケーションのためインストール不要、かつ無料で導入できます。複数人で同時に編集できる点も魅力で、社外の人たちとも、お互いにスプレッドシートを編集し合うことが可能です。
予実管理では、エクセル同様、自社の運営体制に適したフォーマットを一から作成できます。ただし、作成には知識と時間が必要であり、複雑な設定の場合、作成した本人でないと変更や修正ができないこともあります。
エクセルで予実管理票を作成する際は、予実比較をしたい商品・部署単位ごとで1つのシートを作成しましょう。大まかに損益の計算書を作成。月単位の予実だけでなく、当年度や当月までの累計がわかる両方の数値を一つの画面でわかるようにしておくことが大切です。
複雑化してしまえば、どうしても分かりにくくなってしまいます。そのため売り上げがでないような管理部門などは間接費としての費用を配分処理する仕組みを活用するのもアリでしょう。また製造業であれば、大まかな製造原価の報告書などを追加する方法もあります。とにかく簡略化・分かりやすさを追求しましょう。
常に同じスタッフが予実管理を行えるのであれば、マニュアルは必要ないと思うかもしれません。しかし担当者が何らかの理由で交代する可能性もあります。そのときにマニュアルがなければ、現場は混乱してしまうでしょう。そのため簡単で構わないのでマニュアルを作成することが大切です。
マニュアルを作成する際は、勘定科目や部門が変更になった際の修正方法などを記すと良いでしょう。
予実管理を作成する場合、最初に考えなければならないのが予算です。予算とは売り上げ・売上原価・販売費・営業利益・営業外費用が当てはまります。
もし事業をすでにしている場合には、昨年などの実績をもとに予算を立案すると良いでしょう。ただ過去の実績だけを予算として考えるのではなく、企業の成長などを考慮し、低すぎず、高すぎない目標を予算として考えることが大切です。
これから起業をする場合には過去の実績がないので、予算を判断する材料がありません。ただ2年目にどの程度成長したいのかを考えて、予算を組み立てると良いでしょう。
事業内容によっては、季節的に売り上げなどが変動するケースもあるでしょう。そういった場合は年間の予算を純粋に12分割するのではなく、変動に合った予算を調整する必要があります。
予実管理を行う際は月末、または月初めに必ず実績を入力しましょう。実績を正確に入力することで、組み立てた予算とどれほどズレているのかスグに把握しやすくなります。早い段階でズレに気が付けば、すぐに改善するための方法を考えることができるでしょう。
ズレ幅が小さければ特に問題はないかもしれませんが、もし大幅にズレが発生してしまえば原因の検証を行うことが大切です。
何らかの理由で営業ができない状態に陥れば、停止している期間の売り上げが減ってしまい、予算とのズレが発生します。このように理由が明確であれば、対処法も考えやすいでしょう。しかし大きな理由もないのに予算よりも大幅に下回った場合には、すぐに対処を考えなければ、予算との売り上げが拡大する可能性もあり、経営に支障をきたしてしまうので注意してください
ハッキリとした原因が分からないとしても、いくつかの仮説を考え、それを改善するための対処法を実行していきましょう。もしかしたら仮説のひとつだけが正解の場合もあれば、すべてが影響し合っている可能性もあります。
まずは仮説の中で、原因となっている可能性が高いと思われるものから対策を実行することが大切です。この際、対処法を実行するための支出に関してもチェックしておきましょう。売り上げの改善効果が期待でき、支出とのバランスも良い対処法を行うのが理的になります。いろいろと原因を考えて時間を費やしたのに実行には至らない、という状況だけは避けるようにしましょう。
予実管理を始めたとき、一番陥りやすいのが細かすぎる分析です。小さな差異が気になってしまい、どうしても原因などを分析したくなることもあるでしょう。しかし予実管理は、あくまでも経営を改善するための対策を立案し、実行することが目的です。予実管理は手段であり、決して分析だけが目的ではないので注意してください。
予実管理を行う際、目標自体を低く設定し、達成しやすい予算を見積もってしまうケースがあります。もちろん経営者の考えによっても異なりますが、成長していく企業であれば目標値は高めに設定しても構わないでしょう。しっかりと合理的に判断できる範囲で、予算を考えることが大切です。
できる限り実績を立案した予算に近づけたい、達成させたいと思ってしまうでしょう。しかし強引に予算を達成しようとしても、社員にストレスを与えてしまい、疲労困憊するだけです。さらに売り上げの水増しをするといった不正行為につながる可能性もあります。
とくに上場企業では予算と実績のズレが大きくなってしまえば、投資家に説明しなければならず、その労力や精神的負担がかかるため、実績と予算が大きくズレることを嫌がる傾向に。そのため上場している企業であれば、予算にこだわってしまうのは仕方ありません。
しかし一般的な中小企業であれば、予算にこだわりすぎる必要はないでしょう。もし予算と実績が合わなくても、そもそも予算の立て方が間違っているケースもあります。現実に見合っていない予算を立てている可能性もあり、本当に予算が適正かどうかを見直すことも大切です。また取引状況が急に変わったなど様々な理由で予算と売り上げのズレが発生している可能性もあるので、原因を見極めたうえで予算の修正も考えた方がいいでしょう。
現状、多くの企業がエクセルやスプレッドシートで予実管理を行っていますが、その一方で、集計業務や入力フォーマットの作成、メンテナンス業務に課題を感じている企業も少なくありません。
予実管理システムなら、ヒューマンエラーをなくし、業務を効率化してくれるうえ、リアルタイムでの経営判断をサポートしてくれます。
エクセルをベースにしながら、企業の予算管理に特化したさまざまな便利機能を使え、専門知識がなくてもすぐに使いこなせるツールも多くあります。予実管理を有効に活用したいとお考えなら、ぜひ、予算管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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